告白

先日好きな人に手紙を書いた。
私はその人にはもうおそらく会う機会がなくて、
だからその人の友達に渡してもらう事になってる。
はっきり言うと全部書けなかった。もっとずっと言いたい事があった。

私とその人は生徒と塾の先生で、中一の時に塾に入って、初めて私に教えてくれた人。数学だったんだけど、学校より少し進んでて、『累乗』というのを教わった。当然いきなり習っても無いものが解けるわけも無く、理解も出来なかった。ポカァ～ンとしているうちに授業は終わり、座ったまま硬直していると、その先生がニコっとしながらやって来て「学校はどこまで進んでる？」って話しかけてきて、丁寧に教えてくれた。ゆっくり説明してくれたのと、特別大量に出された宿題のおかげで、すぐに追いつくことが出来て、がんばる気になった。
9月には2100人中35位とかとれて、はしゃいでいると、自分と同じように喜んでくれた。

理由は分からない。面白かったから、優しかったからじゃなく、ずっと考えたけどよくわからない。その『人』が好きだった。

その人が私の全てだった。今まで好きになった人は顔がかわいいとか、優しいとか理由が言えた。好きだとは思ったけど、愛してはいなかった。もしかするとこれは初恋なのかもしれないとも思った。

中二になる時、その先生はほかの場所へ行ってしまった。大学院へ行ったって3ヵ月後知った。気付くの遅いって思うかもだけど、ほかの先生にどこにいるのか聞きたくなかった。長く風邪引いてるんだって決め付けた。ある女の子が言ってるのを聞くまで。
その日から毎晩泣いた。声は出なかった。涙だけが頬を伝った。止めようと思わなかった。「人が一生で流せる涙の量は一緒だ」って本で読んだことがあった。底があるなら出なくなるまで使い切ってしまえって…

一度も会うことも無く中三のバレンタインデー。会いたかった。気持ちを伝えたかった。会えなかった。買ったチョコはいらなくなった。友達と二人で食べた。味は覚えてない。3年目にして初めて大声で泣いた。入試直前に何してんだろうとも思ったけど、私には入試より大事なイベントだった。

私は先生が他の場所で先生しながら大学院通ってると思ってた。だから常に1番目指した。トップの方だったら先生も名前を見つけて私を思い出してもらえると思った。高校も一番の所めざした。4.35倍だったけど、そこに受かれば絶対みてくれる。そう思ってがんばった。本気でがんばった人が268人落ちた。複雑な心境。罪悪感はあった。

でもこの2日後その先生から電話があった。合格の知らせを聞いてかけてくれた。その先生は私の気持ちなんか知らない。声を聞いただけで泣いてしまった。ばれないように自分からは話せなかった。何を言ってるのかもわからなかったけど、でも私の為に言葉を考えて話してくれているのが嬉しかった。今思うとこの時言ってしまえばよかったのに。

3時間考えて書いた手紙。ずっと会えなかった2年間の気持ちが短時間で表すことなんか出来ない。1冊や2冊分の文字が書ける。
全部伝えたかった。でも無理だから、共有しているはずの記憶と思い出と。愛してる。たぶん一生。この気持ちが少しでもあなたの元へ届くのを願ってる。

1回でいいから目を見て「りょう」って名前を呼びたかった